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[受験歳時記] 第62回「ジャンプ台」

高校受験 SAPIX中学部

ベストワン

引っ越しシーズン。開店間もない不動産店の幟旗が揺れていた。「住まい選びは当店へ」。
ん?「住まい探しは当店へ」の間違いでは?探すときは専門業者の情報力を必要とするが、選ぶときは住む本人次第だろう。助言者のアドバイスは気になる物件を探している間までのことであって、気になる中からお気に入りを絞り込み、さらにベストワンを決めるのは100%本人の価値判断だ。そこを他人に託してしまうと最終決定した納得と覚悟が本人の中に生まれない。

SAPIX 中学部の公式noteに、「苦手意識と向き合えた高校受験」と題した親子インタビューが掲載されている。ここに登場する高校生も、学校探しは周囲のサポートを取り入れているが、学校選び以降はスケジュール管理も含め、実に主体性をもって動いている。探している間はまだあどけなさの残る表情の「中学生」も、選ぶ意志を固めて行動するようになると、いよいよ「受験生」らしい面構えになるのかもしれない。

変化

SAPIX中学部の情報誌『スクエア』には、同じインタビューと共に、お風呂にまで持ち込んだという英文法のテキストの写真が載っているが、入浴剤並みの新陳代謝と血流効果を上げたことだろう。牧歌的な作品の『赤毛のアン』から人間の暗い淵を覗く『夜と霧』まで愛読書も幅広い。海外の日本人学校でPTA対象の図書館に通っていたことも、世の中を眺める目を養うのに大いに役立っていたに違いない。

2人の子の受験を足かけ6年間見守り続けたある母親が、かつて、こんなことを言っていた。「受験する子って、受験期に二度変わるものですね」。一度目は「このままじゃダメ!」と危機感をもって受け止め、二度目は「このままじゃなければダメ!」と自分流のスタイルを貫こうとするということらしい。
前述の高校生の場合なら、一度目は中3の夏休み明け、課題の山を前に講師から発破をかけられた時であり、二度目は年明けを挟み数学の偏差値が大きくダウンしても淡々とこれまでの勉強を続けた時がそれに当たるだろう。実際、一度目は勉強時間と勉強法をがらりと変えることで切り抜けているし、二度目は点数に一喜一憂せず、「私は私」をそのまま堅持することで適応している。まずは周囲の助言を受け、自分流の学び方をつくる時期が最初にあり、ひとたびスタイルを確立するや、今度は周囲を遮断し自分を貫き通す時期があるようだ。
当初「苦手なものは苦手」と開き直っていたはずの中学生が、正味1年弱の間に学習面や生活面、自己管理面とここまで行き届いた成長が果たせたことは、まるで、窯の中の焼き物が土色から飴色に、飴色から褐色に変わっていく窯変ようへんを見るようだ。

ラジオ中継

北京五輪のジャンプ混合団体。規定違反で失格となった高梨選手の二回目のスタート直前を伝えるラジオ中継。それは気丈にも今から渾身の力をふりしぼって泣きながら飛ぼうとする彼女への言葉であると同時に、これから新生活を迎える全世代への掛け声にも聞こえる「さしすせそ作文」だった。―――「さあ、深呼吸して、座り直して、背筋を伸ばして、それ行け!」


増田 恵幸
著者紹介:SAPIX中学部にて高校受験指導、受験情報誌『SQUARE(スクエア)』編集に携わる。2019年定年退職。在籍時より『受験歳時記』を執筆。

◆『受験歳時記』第1~55回のバックナンバーは、SAPIX中学部ホームページで読むことができます。第56回以降は、マガジン「コラム[受験歳時記]」からご覧ください。

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