高校受験 SAPIX中学部
【インタビュー】市川高校 及川秀二校長先生~自ら学ぶ力を育み 将来を切り拓く力を養う~
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【インタビュー】市川高校 及川秀二校長先生~自ら学ぶ力を育み 将来を切り拓く力を養う~

高校受験 SAPIX中学部

千葉県屈指の私立進学校として知られる市川高校。個性の尊重と自主自立の教育理念の下、自ら学ぶ力を育てる「第三教育」に力を入れているのが特色です。そのために用意された教育プログラムは多彩で、自ら挑戦し、探究していく生徒たちの姿勢は、好調な大学進学実績にも反映されています。進化を続ける同校の教育内容について、今春、新しく校長に就任された及川秀二先生に伺いました。

※2022年4月19日に取材を行いました。
※この記事は2022年6月1日に刊行されたSAPIX中学部の受験情報誌『スクエア』213号に掲載された記事のnote版です。

育てたいのは、生涯を通して
自ら学び成長する「自己回転力」

―――市川学園は今年で創立85周年を迎えました。及川先生も学園のご出身ですが、校風や雰囲気など、当時と今とを比べて変化を感じるところはありますか。
及川先生:私は中学・高校を市川学園で過ごし、大学卒業と同時に教員として本校に赴任しました。市川中学に入学したのはちょうど50年前です。その頃から自由な校風は変わっていません。当時は週に授業が30時間しかなく、授業が終わったら自分で何かを探して取り組みなさい、という感じでした。今はもっと授業時間数が多くなりましたが、自由な雰囲気があって、自分で何かを見つけて挑戦するという校風はずっと受け継がれています。

―――個性を重んじ、自主自立を教育方針としていることの表れですね。その土台となっているのが「独自無双の人間観」「よく見れば精神」「第三教育」という三つの建学精神です。これについて説明してください。
及川先生:「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」という松尾芭蕉の俳句があります。なずな(ナズナ)は道端に咲く地味な花ですが、よく見れば、なずなにしかない美しさがあります。人間にもそれぞれ、その人にしかない個性、独自無双の良さがあります。ですから、教師は生徒をじっくりと見て、一人一人の個性や能力を引き出さなければなりません。それが「独自無双の人間観」と「よく見れば精神」の価値観です。
「第三教育」は、家庭で親から受ける第一教育、学校で教師から学ぶ第二教育の次に来るものです。本校では自ら主体的に学ぶ「第三教育」こそ、生涯続く学びの力だと考えています。一般的には20代で大学、大学院を卒業して社会に出ていきます。しかし本校では、人生80年、100年の長いスパンを考えると、卒業後も自ら学び続ける力が必要であると創立当初から唱えてきました。人に習うのではなく、自分で学ぶ力を本校では「自己回転力」と言っていますが、自己回転できるような学びの姿勢を生徒たちに育んでもらう。そして、社会に出てからもどんどん自分で学び、新しい展開ができるようにする。それが本校の「第三教育」です。

市川中学校・高等学校
校長 及川 秀二 先生

―――「第三教育」の精神を具現化したプログラムの一つが、「土曜講座」ですね。
及川先生:「土曜講座」では教科の枠を越え、大学教授や研究者、作家、芸術家、企業の専門家など、幅広く第一線で活躍されている方をお呼びしています。理事長や教員の人脈を生かして実現できた講座もあり、「生徒の学びのために」と多くの方々にご登壇いただいています。最近は卒業生や保護者の方で専門職に就いている方のお話を伺うこともあります。多彩な分野の専門家に話していただくことが刺激になって、将来の方向性が見えてくることもあります。

次世代のリーダーに不可欠な
教養力を培う「市川アカデメイア」

―――近年はリベラルアーツ教育にも力を入れていますね。
及川先生:松尾芭蕉の話に戻ると、芭蕉は俳句という定型の中にどんどん新風を注ぎ込んでいきました。「不易流行」という言葉がありますが、本校も三つの柱から成る建学精神を「不易」の部分として、そこに「流行」である新しいものをどんどん取り入れて進歩していきたいと考えています。
その「流行」の部分として、この10年ほど意識して力を入れているのがリベラルアーツ教育です。さまざまなプログラムを用意して、文科系、理科系志望の区別なく、「学力」「科学力」「教養力」「国際力」「人間力」の五つの力を育成することを目指しています。

―――特に「教養力」と「人間力」の養成に関わるのが「市川アカデメイア」ですね。これはどのような講座ですか。
及川先生:高2の生徒を対象にした選択制の対話型セミナーです。哲学や社会科学などの古典を読んで、参加者同士で自由に対話をするものです。第二次世界大戦後にアメリカのトップ企業の経営者たちが、次世代のリーダーに必要な深い教養を身に付けさせるために開催した「アスペン・エグゼクティブ・セミナー」をベースとしています。それを日本の高校生にも体感してもらいたいと考え、一般社団法人日本アスペン研究所の協力を得て行うようになりました。今年も希望者がかなりいて、2グループに分けて20人弱ずつ講座を開いています。
生徒たちは人の主張を批評したり、自分の意見を強く主張したりすることは訓練してきています。しかし、ここでは議論ではなく、ギリシャ哲学の流れである「対話」を行うことがポイントです。ある主張に対して、人に伝わるように論理的に自分の言葉で意見を述べる。これはとても大切なことですが、同じくらい重要なのが「聞く力」です。参加者は対話を通して、人が言っていることをしっかり聞いて理解するという訓練を積むことができます。また、学年末にはそれぞれが論文を書いて論文集にまとめます。ですから、1セットで「読む」「話す」「聞く」「書く」力を付けられるセミナーになります。

―――受講した生徒たちはどのような感想を述べていますか。
及川先生:多くの生徒から、「ものの見方が変わった」とか「自分の世界が広がった」という声が寄せられています。「今まで、こんなに深くものごとを考えたことがなかった」「勉学に取り組む姿勢が変わった」と言う生徒もいます。スタートしてちょうど10年が経過しましたから、今年は10周年の記念論文集を出す予定です。

基礎力を土台にして取り組む
理系の課題研究、文系のLAゼミ

―――SSH(スーパーサイエンスハイスクール)は今年で13年目になりますが、これまでどのような成果がありましたか。
及川先生:SSHは2009年度から継続して指定を受け、今年で3期目に入りました。SSHには、こうしなさいというガイドラインがあるわけではありませんから、学校によって取り組みが違います。
本校では、全学年で実験・実習を軸にした学習活動に取り組み、その中で自然科学の探究方法などを体験しながら学んでいます。また、本校では1学年約430人のうちの6割強が理系に進みますが、理系志望の生徒は高2になると、全員が課題研究に取り組みます。自分たちでテーマを決めて1年かけて研究し、最後に発表を行います。途中で構想発表会と中間発表会があり、構想発表会では、SSHに関わる大学や高校の先生方が出席して意見を述べてくださいます。また、コロナ禍が拡大した後はできていませんが、大学の研究室や企業の研究所を訪ねて学ぶ機会も設けています。こうした経験を通して、生徒たちは探究・研究を行うノウハウを身に付けていきます。

―――文系の生徒には「LA(リベラルアーツ)ゼミ」が用意されています。これはどのような授業ですか。
及川先生:高2の文系生徒が学ぶ、1テーマ10回のゼミ形式の少人数授業です。本校の教員以外に外部の講師の方をお呼びして、社会、国際、芸術分野など、授業ではできないさまざまなテーマを取り上げて深く掘り下げます。自分で調べ、考え、議論を重ね、最後は成果をまとめて発表を行います。前期と後期に分かれますが、例えば夏休みに「英語で落語をする」といったものもあり、ユニークな講座が多く設けられています。

―――知的好奇心を刺激する多彩なプログラムが用意されていますね。
及川先生:こうしたプログラムは、確かな基礎学力の土台がなければ成り立ちません。まず、授業を通してしっかりとした基礎学力を養うことが私たちの役目です。そのうえで、いろいろな「仕掛け」を用意しているわけです。学年ごとにもさまざまなプログラムがあります。「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざがありますが、本校の生徒たちは、連れて行かなくても自分で水を飲みに行きます。本校では生徒たちに、外部の活動に参加したり、海外に出かけたりなど、「他流試合」に挑むことを推奨しています。でも、私たちが指示しなくても、生徒たちは自分の考えでいろいろなことにチャレンジしています。

図書館を中心とした学習のための情報拠点「第三教育センター」

海外での活動も難関大への挑戦も
先輩に続く道ができたから

及川先生:本校には毎年3月に「市川アカデミックデイ」があります。これは中学・高校合同で、終日、校内の國枝記念国際ホールなどでプレゼンを行う大規模な行事です。中1から高2まで、本校の生徒は個人でもグループでも、海外や学外に出てさまざまな活動を行っていますが、そうした活動の成果を発表する場です。SSHの課題研究の発表会もこの場で行います。在校生だけでなく、保護者や卒業生、大学の先生方なども来場されます。

―――仲間の発表を見る生徒たちには大きな刺激になりますね。自分も何かにチャレンジしてみたいと思うのではないでしょうか。
及川先生:以前に比べて、ずいぶん積極性が出てきたと思います。最近はコロナ禍で実施できていませんが、本校にはさまざまな海外研修制度があります。それ以外にも、例えば文部科学省が官民合同で行っている留学支援「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」では、これまでに30名以上が代表に選ばれて世界各地に出かけています。ただこの時期、なかなか留学生を受け入れる国が少ないのが現状です。そんな中、今年の3月にフィリピンが外国人を受け入れていることを知って、自分でストリートチルドレンのボランティア活動に参加した生徒がいます。なぜ、そういうことをしたかったのかと聞くと、「市川アカデミックデイ」で先輩のプレゼンを聞いたからだ、と言っていました。最初は教員が一生懸命に引っ張りましたが、あるところまで行くと、生徒たちは自分で勝手に動き出すのですね。それが最初にお話しした「自己回転力」です。
先輩の話を聞いて次に続くという流れは、大学受験でも同じです。本校ではかつて、東大「2桁の壁」といったものがありました。当時も優秀な生徒は多数いましたが、壁になったのは、東大を受けることのリアリティがなかったということです。ところが今のように50人、60人が東大を受け、20人以上が合格するようになってくると、「あの先輩が東大に受かった」「自分も頑張ってみよう」という流れになります。全てが「自己回転力」なのですね。

―――毎年、素晴らしい進学実績が出ていますが、進路指導はどのような方針で行っているのでしょうか。
及川先生:一人一人を大切にするということに尽きます。入学直後から学年全体、理文別、志望分野別、少人数など、さまざまな形の進路ガイダンスを行います。そのときに一番効果があるのは、優秀なOB、OGをたくさん招いてロールモデルを見せることです。先輩たちは教科書や参考書に載っていないような体験談を披露してくれますから、そこから自分の目標、勉強法などを見つけることができます。最近は大学選びも偏差値で決めるのではなく、学びたいものを優先して決める方向性になりつつあります。「○○先生の研究室に行きたいから、この大学しか受けない」という生徒も少なくありません。海外の大学で学ぶ先輩に刺激されて、海外大学への進学を希望する生徒も増えています。

校内にある「隙間スペース」の一つ。生徒たちは授業時間以外にも自由に討論することができる

蓄えた力を人のために使えるように
人とつながる「共感力」を育みたい

―――御校では2017年から高校の一般入試を5教科にしていますが、なぜ3教科から5教科に変えたのでしょうか。
及川先生:高校の授業はもとより、大学入試も多様化していきます。それなのに3教科だけの入試でいいのか、という疑問は以前からありました。市川学園では、中学入試は4教科です。学校によっては算数入試のように一つの科目だけに特化した入試制度もありますが、例えば算数が好きでも、入学後に国語や社会の面白さに気付いてそちらに進む、ということは当然あります。そういう点を踏まえて、高校入試も3教科に特化するのではなく、理科、社会を頑張っている受験生にも光を当てたいと考えました。
大学入試は理系であっても国語の力、社会の力が試される方向にあります。文系であっても、今は数学が必要な時代です。教科にこだわらず、幅広く学力の土台を築くことが大事ですから、高校入試でもそういう力を試したいと考えています。

―――新しく校長に就任され、市川学園をどのように進化させていきたいとお考えですか。
及川先生:学校としては大学合格者数を増やすことも重要ですが、生徒一人一人に、その先にある自分の将来を実感させることが最も大事なことだと考えています。
また、「共感力」を持たせることも大切です。共感力とは、人とつながっていく力です。生徒たちは、本校に入る前は受験勉強を通して自分の中に多くの知識をため込み、たくさんの問題を解けるようにしてきたと思います。しかし、重要なのは、ため込んだものを、どう人のために使うかです。ボランティア活動でもいいですし、地域貢献でもいいでしょう。積極的に学外に出て、社会とつながる機会を増やしてほしいと思います。本校では今後も、人とつながる「仕掛け」をたくさんつくり、生徒たちに提供していきたいと考えています。

―――最後に、高校入試に向けて頑張っている受験生たちにメッセージをお願いします。
及川先生:本校は郊外に立地していますから、グラウンドは広いし、校舎の中もゆったりとしています。そうした恵まれた環境の中で生徒たちは、日々の学習はもちろん、クラブ活動などの課外活動にも伸び伸びと取り組んでいます。本校の生徒たちは学校にいるのが楽しいのでしょうか、クラブ活動がない日でも、なかなか帰りたがりません。校内には「隙間スペース」がたくさんあります。そのスペースにはピアノが置かれたり、ベンチが用意されたりしていて、生徒たちは自分の好きな場所で、思い思いに過ごしています。そんな市川の校風や、「自己回転力」を重視した教育が合っていると思う受験生は、ぜひ、本校で実り多い高校生活を送っていただきたいと思います。

市川中学校・高等学校
〒272-0816 千葉県市川市本北方2-38-1
京成本線「鬼越」駅より徒歩20分、JR総武線・都営新宿線「本八幡」駅、JR武蔵野線「市川大野」駅よりバス各11分、JRほか「西船橋」駅より直行バス20分(登下校時のみ運行)
www.ichigaku.ac.jp


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