【インタビュー】筑波大学附属駒場高校の魅力 ~町田多加志 副校長先生に聞く~
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【インタビュー】筑波大学附属駒場高校の魅力 ~町田多加志 副校長先生に聞く~

高校受験 SAPIX中学部

筑波大学附属駒場高校は最難関の男子進学校として知られる学校です。「挑戦 創造 貢献」を学校目標に掲げ、学業・学校行事・クラブ活動の三つの教育機能を充実させることで生徒の人格形成を図っています。自由闊達な校風の下、筑駒生はどんな学校生活を送っているのでしょうか。副校長の町田多加志先生に同校の教育の特色と魅力をお聞きしました。

※2021年12月17日に取材を行いました。
※この記事は2022年2月1日に刊行されたSAPIX中学部の受験情報誌『スクエア』211号に掲載された記事のnote版です。

研究の視点に基づく先端教育を実践 
自由な校風の下で目標を見つける

―――御校は筑波大学と、その前身の東京教育大学などの附属校として歴史を重ねてきました。国立大学附属校の教育にはどのような特徴があるのでしょうか。
町田先生:その最大の特徴は、教育の場であると同時に研究の場でもあるということです。教員は常に教育に関する研究を行っていますし、教育実習にも協力しています。
また、国の拠点校、地域のモデル校として初等・中等教育の研究開発を行っており、授業見学を受け入れたり、国の機関などから求められて実験や実証に取り組んだりすることもあります。

―――そのことは、生徒にはどんなメリットがありますか。
町田先生:教科書の枠を超えて、広く深く学べることです。例えば、毎年恒例の教育研究会という行事では、全国から集まった教員を対象に公開授業と研究協議会を実施しています。この公開授業は実験的な内容なので、生徒たちも大いに刺激を受けます。

―――御校は自由な校風でも知られていますね。
町田先生:自分なりの夢や目標を持ち、それに向かってどんどん挑戦してほしい、というのが本校の生徒に対するスタンスです。勉強を頑張ってもいいし、スポーツに夢中になってもいい。学術系のオリンピックに力を入れる子もいれば、文化祭の運営に熱中する子もいます。高校生に対しては「3年間の自由空間」と言っています。私たち教員はやりたいことを見つけた生徒を徹底的に応援します。
その一方で、当然ですが自律も重要です。何が良くて、何が悪いのか。自分で見極めることを求めます。生徒というよりも、一人の大人として向き合っているといった方が正確ですね。型にはまらず、いろいろなことに挑戦してほしいですし、生徒たちは実際にそうしていると思います。

―――例えばどんなことに挑戦しているのでしょうか。
町田先生:昨春卒業した生徒の中には、点字を墨字(書かれたり、印刷されたりした文字)に翻訳するアプリを開発し、読売新聞社主催の日本学生科学賞で内閣総理大臣賞を受賞した子がいました。高2の時の「課題研究」で点字について研究したのがきっかけだったようですが、視覚障害者をサポートする健常者のためのアプリを作るという発想には感心させられました。

―――多様な生徒がいるなかで、自由に自分を磨き、成長できる学校といえますね。
町田先生:実際、卒業生もそう言っています。

高校副校長 町田 多加志 先生

したいことに夢中になって 
かけがえのない仲間に出会える

―――したいことがある生徒にとっては楽しい学校生活になりそうですが、そうしたものが特にないという場合はどうなのでしょうか。
町田先生:もちろん、そういう生徒もいます。入学当初は大半がそうでしょう。ただ、みんながさまざまなことをやっているのを見て、次第に自分はこんなことをしたいというものに出合い、一緒にやる仲間も見つけていきます。それは中学も高校も変わりません。どんな生徒も自分のやりたいことが何かしら見つかる学校なのです。

―――では、町田先生が考える「筑駒らしさ」とは何でしょうか。
町田先生:自由な校風とも関係しますが、何事にも「この学年だからこれをしないといけない」ということはなく、いつスタートしても、いつまでやってもいいというところが最大の筑駒らしさだと思います。最初はそれを心配する保護者の方もいますが、様子が分かってくると、ほとんどの場合、今やりたいことに全力で取り組む子どもを親として認めてあげようと変わっていきますね。

―――かけがえのない仲間ができる学校生活になりそうですね。
町田先生:はい。生徒たちは皆、良い仲間に恵まれます。母校が好きになる生徒が多いせいか、卒業後も行事があるとよく訪ねてきます。また、後輩の面倒をよく見ますし、同窓会も活発に開かれています。

―――横のつながりも縦のつながりも強いのですね。
町田先生:そのとおりです。部活動や自治会活動もそうですし、文化祭の特別班といったつながりもあります。本校の三大行事の一つである文化祭では、高3はクラスを解体し、特別班というグループで食品、喫茶、ステージ、縁日などに分かれて活動するのですが、そこでも先輩・後輩の関係が密になります。入場者数を制限して開催した今年度の文化祭でも、生徒1名につき8名までという入場枠の中で先輩に声を掛けたケースが多かったようです。
各種の学術系オリンピックで活躍する生徒も多く、興味のあるものを自分たちで見つけ、仲間を募って積極的に参加しています。学校としてもサポートしており、過去に優秀な成績を収めた先輩たちを呼んで数学オリンピックのワークショップなどを開いてきました。どんな問題をやればいいのか、どういう心積もりで臨んだらいいのかなど、実際に出場したからこそ伝えられることがありますから。そうしたことにとどまらず、先輩たちがオリジナルの問題を作って生徒たちに解かせ、それについて講義をしてくれることもあるほどです。

生き方を示す学校目標
筑駒には「自由・闊達の校風のもと、挑戦し、創造し、貢献する生き方をめざす」という学校目標があります。「挑戦」が示すのは、既成の価値観にとらわれがちな自分自身に立ち向かって新しい世界を切り開こうとする姿勢です。「創造」は、同校の校風である「自由・闊達」の具体的表現で、柔軟に伸び伸びと全てに意欲的に取り組もうとする行動面での態度を意味します。そして、「貢献」が目指すのは自らに「挑戦」し、「創造」した結果として実現したものを社会に役立てることです。どんな道に進んでも必要となる「挑戦」「創造」「貢献」という三つの生き方を目標に、筑駒の教育は実践されているのです。

SSHの学びを全科目に導入し 
探究プログラムにも反映

―――授業以外にも学びの機会が多くありますね。その一つとしてよく知られているのが水田学習です。
町田先生:中1と高1を対象に総合学習の一環として行っています。学校のルーツが東京農業教育専門学校で、水田学習の舞台は近代農業発祥の地といわれる水田です。生徒たちはそこで、一つ一つ種籾たねもみを植えることから米作りを体験します。何事もそうですが、知識を得るだけでなく、実際に体験することは非常に大切です。
知識を得る能力が高い本校の生徒には、その裏付けになるものも持っていてほしいと考えています。新型コロナウイルスで休校になった一昨年は、担任団の教員が育てた苗を生徒が持ち帰り、自宅で栽培・観察するようにしました。それを受け、昨年は前年に十分な体験ができなかった生徒も含め、中高各2学年分の生徒に2期作で米作りを学んでもらいました。

―――他の取り組みも挙げてください。
町田先生:高2の総合学習では「関西地域研究」に打ち込みます。関西に関わるテーマを自分たちで設定。実際に企業や大学、役所を取材し、文書にまとめて報告会を開くというものです。修学旅行に代わる学びの一環ですが、単に観光地に行くだけではない取り組みになっています。
同じく高2では「理数探究基礎」または「総合的な探究の時間」、さらに高3では「課題研究」というプログラムも用意しています。本校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校なので、理数系志望の生徒は理数探究基礎を選択しますが、総合的な探究の時間、課題研究は全科目を対象に、興味のあるテーマを設定してゼミ形式で研究。その成果はSSH指定校が集まって行う生徒研究交流会など外部でも発表しています。台湾の学校を訪問して英語で発表する機会もあり、現在はオンラインで行っています。

―――まるで大学のようですね。
町田先生:実験器具が充実していますし、数学の課題研究では筑波大学の先生に講評をもらう機会もあります。本校の教員以外の人と触れ合う機会も多く、授業とはまた異なる学びの時間になっています。
SSHというと理数系を重視するようなイメージがあるかもしれませんが、本校では全科目にSSHの学びを導入しています。教育の趣旨として教養主義を掲げているので、例えば社会科なら最高裁判所を見学したりしています。そこで働く卒業生に生の声を聞かせてもらうこともありました。これも実際に体験する、本物に触れるということに通じます。

―――社会貢献事業として「筑駒アカデメイア」に取り組まれています。
町田先生:筑駒アカデメイアでは、卒業生などを講師に招いて、地域の方を対象にした講演会を年に2回開いています。また、年に1回は生徒が講師を務める公開講座を開催。ジャグリングや囲碁、将棋、実験などの教室を設け、生徒たちが地域の人や子どもたちに教えることで、地域の皆さんとのコミュニケーションを図っています。
これ以外にも、科学部の生徒たちは近隣の小学校や茨城県の小学校に出向いて理科実験教室を行っています。こうしたイベントも、教員は相談に乗るだけで、全て生徒が準備し、当日も自分たちで運営します。そんな先輩の姿は後輩のロールモデルにもなります。

米作りから広く学ぶ水田学習
筑駒の伝統でもある水田学習は、学校から程近い駒場野公園内にある「ケルネル田んぼ」と呼ばれる水田で、中1と高1を対象に行われます。ここは日本近代農学の発祥の地となった駒場の農学レガシーの一つ。明治時代の初め、筑駒の前身である駒場農学校に外国人教師としてやってきたオスカー・ケルネル氏が近代農法を伝えるために作ったものです。同校がこの地を去った後は、筑駒が教育活動の場として継承・活用。都内では数少ない貴重な水田として今も大切に守られています。
水田学習に臨む生徒は播種はしゅから田植え、除草、稲刈りまで、1年をかけて米作りを体験。収穫したもち米で餅つきをしたり、赤飯にして新入生や卒業生に配ったりしています。作業としての米作りはもちろん、学校のルーツや稲作文化の歴史を知り、環境問題にも思いをめぐらせる貴重な機会になっています。

1年をかけて田植えから脱穀までを体験します。写真は刈り取った稲を稲架に干す様子

リーダーシップを発揮する局面も
フォロワーを経験する機会も

―――先生は数学がご専門ですが、数学でも飛び抜けた力を持つ生徒はいますか。
町田先生:この子は一目置けるなという生徒が常にいます。彼らは着眼点が違うんですよ。リミッターもありません。授業で1次元、2次元の話をした際、「1プラスi次元はどうでしょうか」と虚数について質問にきた子がいて、自由な発想に驚きました。さらに、疑問に思ったことを尋ねにくるだけでなく、自分で考えて検証し、こんなこともできると報告する子もいるほどです。

―――数学の授業ではどんな点を工夫されていますか。
町田先生:これは数学に限りませんが、本校の生徒はあまり物おじせず、前に出て自分の解答を示すことに気後れしません。男子のみのクラスだから発言しやすいのか、積極的に質問や意見をする生徒が多いです。仮に答えが間違っていたとしても、否定的に見られることはなく、「僕はこう思う」という議論が成り立ちます。良い問題をこちらが提供すれば、それに食いついてくれます。静かに問題を解くというよりも、わいわい騒ぎながらみんなの考え方を聞き、みんなで解き方を共有して、答えを探していくのがこの学校の授業スタイルです。
自分の考えを話したい、書きたいという生徒が多く、中1の最初の頃はそれこそ鍋が沸騰するようにそこかしこで手が挙がるため、それを整理するのが教員の役割になっています。高入生にもそんな雰囲気の中に臆せず入ってきてもらいたいです。「僕はそういうタイプじゃない」という子も、その環境に身を置くだけでも刺激を受けますし、周りの様子を見ていつの間にか「自分も」と影響されると思います。

―――リーダーを担うような性格でなくてもいいということですか。
町田先生:優れたリーダーシップを発揮する生徒もいますが、特定の子がいつもリーダーになっているわけではありません。その時々の場面に応じてリーダーが交代していくのです。あるときはリーダーだった子が、次はフォロワーになってリーダーを支えることも珍しくありません。多彩な学校行事があって、さまざまな集団ができ、その都度リーダーが変わっていく。そうした経験を重ねていくことで、リーダーとしての役割もフォロワーとしての役割も自然と身に付いていくようです。
何かをしようとするとき、お互いのことを理解しているので、すぐに「これは彼に頼もう」となります。コロナ禍での文化祭も、何とかしたいという気持ちがあって、生徒たちは互いにフォローしながら実現させました。進学先で、気付くと何かのリーダーになっていたという卒業生の話もよく聞きます。

興味が向かうベクトルはさまざま
誰もが自然体で過ごせる学校

―――高校から入学してくる生徒はすぐになじめるでしょうか。
町田先生:高校からは40人が入学し、4クラスに10人ずつ加わります。最初は不安かもしれませんが、心配はいりません。私たちも楽しみにしていますし、入学して間もなく、誰が高入生で誰が連絡生(中学から内部進学した生徒)なのか、よく分からなくなります。

―――高校入試では内申点が重要で、実技4科目も重視されます。中学は特定の分野に優れたとがった生徒が多い印象がありますが、高校ではバランスの取れた生徒を求めているのでしょうか。
町田先生:確かに高入生にはバランスの良い子が少なくありません。中学で学級委員や生徒会長を経験している子も多いです。しかし、そんな子たちがとがっていないかというとそうではありません。中学にも高校にも、それぞれに持ち味のある多様な生徒が入学しています。

―――どんな生徒も肩の力を抜いていられる環境といえそうですね。
町田先生:自然体で、思うがままに過ごせると思います。いろいろな方向に進むベクトルがあり、卒業後に美術や音楽の道を選ぶ生徒もいます。高校は3年間という短い期間ですが、本当にどんなことでもできます。多様性という言葉では表現しきれない、あらゆるものが混ざり合った学校だと思います。

―――高校入試ではどんな力を見るのでしょうか。
町田先生:入試に際して意識してほしいのは、暗記に終始したり、パターンに合わせて学習したりするのではなく、基礎を自分のものにして臨機応変に使う力を付けること。学んだことをどう使うかを考えて勉強してほしい。あとは緊張せず冷静に実力を発揮してくれるといいですね。試験中に「今年はこうきたか!」と楽しみながら問題にチャレンジしてもらえるとうれしいです。

―――最後に、高校受験に向けて頑張っている小中学生へのメッセージをお願いします。
町田先生:筑駒はいったいどんな学校なのか、ちょっとミステリアスで不思議に感じている人も少なくないと思いますが、特別な準備をする必要はありません。自分が持っているものをそのままに入学してくれればいいと思います。ただ、漠然とでも構わないので、こんなことをやってみたいという夢や目標があるといいですね。本校にいる間に実現しなくても、同じような夢を持つ仲間がきっとできるので、その仲間と協力し合う高校生活を送ってほしいと思います。コロナ禍で受験勉強も大変だと思いますが、入試当日は十分に実力を発揮できるよう頑張ってください。

―――町田先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。

筑波大学附属駒場中・高等学校
〒154-0001 東京都世田谷区池尻4-7-1
京王井の頭線「駒場東大前」駅より徒歩7分、東急田園都市線「池尻大橋」駅より徒歩15分
www.komaba-s.tsukuba.ac.jp

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