
東京学芸大学附属高等学校(一般) 2022年出題傾向リサーチ
英語

①リスニング問題:小問数5
英語の放送文を聞き、質問の答えとして最も適切なものを番号で解答する形式です。例年放送文は1題で小問数は4問でしたが、2022年は小問数が5問になりました。問題用紙には質問が記載されていないため、1回目の放送で放送文の全体像と質問を聞き取り、2回目の放送で確実に正答を選ぶことがポイントです。
②説明文の読解(約620語):小問数7
スタジアムなどで見られる観衆のウェーブについての説明文です。ウェーブが起こる背景を観衆の行動と心理的要因から説明するといった、理系の思考も求められました。問4は筆者の感想を述べている部分の意味を推測する、高い思考力が必要な問題でした。内容を整理しながら読み解く必要があり、長文3題の中では最も時間を要したと思われます。
③物語文の読解(約840語):小問数12
ある市場でのさまざまな人々の様子を描いた物語文です。登場人物の視点から状況を想像しながら読み解くことが大切です。問1、問2、問4では登場人物に関して、問5や問8では熟語の意味を問うものが出題されましたが、いずれも状況を想像することで正答を導くことができる問題でした。
④物語文の読解(約850語):小問数10
彫刻家であるアントニオ・カノーヴァの幼少期の出来事を題材とした物語文です。問8は、主人公がどのようにトラブルを解決したのかを読み取れていないと解答しづらい問題でした。3題の長文の中では語数が最も多いものの、平易な英語かつ内容が読み取りやすい物語で、多くの受験生にとって取り組みやすい長文でした。

数学

①小問集合
(1)平方根の計算、(2)連立方程式、(3)三角錐、(4)座標平面と確率の4問構成でした。後半の大問の難度を鑑みると、(3)までは確実に得点しておきたいと言えます。(4)は作業量が多く、自信をもって答えるのは難しかったと思われます。
②座標平面上の動点
座標平面上を2点が動いてできる図形についての問題でした。(2)(3)では複数解答のため、丁寧な処理が要求されましたが、(2)までは正解したいところです。(3)は難度が高く、完答できた受験生は少なかったと思われます。
③円
円内に複数の弦が交わる図形において、長さや面積を求める問題でした。図が複雑なため、図形の性質や線分の位置関係の把握がしっかりできたかどうかがポイントです。それらが把握できると、(2)(3)の両方に対応しやすくなりました。
④二次関数と反射
放物線上の2点を結んでできる線分と、それに当たって反射する光に関する問題でした。過去3年間、会話文や穴埋め形式の証明など、誘導に沿って解き進める問題が出されています。2022年は会話文形式で誘導があり、焦らず丁寧に対応すれば(2)までは正解できたと思われます。
⑤円と軌跡
円周上を動く点と、それに伴って動く点の軌跡について考える問題でした。(2)以降は自分で図を描いて考える必要があります。日頃から正確に図を描く習慣がついていれば、図形の性質に気づきやすかったと思われますが、難度は高く、全問正解は難しかったことでしょう。

国語

①宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』
変容する日本の平等観について考察した論説文からの出題でした。同一の内容が言葉を換えて繰り返し説明されているため、読みにくさはありません。例年同様、設問の大半を記号選択が占めていて、一部にまぎらわしい選択肢が含まれています。まず頭の中できちんと解答イメージを作ったうえで、各選択肢の内容を慎重に検討していくことが求められました。空欄補充形式の抜き出し1問は、設問条件をヒントに手早く処理したい内容でした。漢字は5問出され、いずれも標準レベルの難度です。
②池澤夏樹『スティル・ライフ』
とある海沿いの土地に毎年訪れることを習慣としている主人公の感懐を描いた小説文からの出題でした。感覚的な言葉や比喩表現が多用されているため、特に文章後半には読み取りにくさがあります。文中表現の理解に関するまぎらわしい選択肢も多いため、ある程度時間をかけて取り組むべき大問だったと言えます。例年の傾向通り、この大問で文法問題も出されています。2022年は「ない」の品詞識別が問われましたが、高校入試では定番の問題なので確実に正解したいところでした。
③『花月草紙』
江戸時代後期に成立した随筆文からの出題でした。「交友」をテーマとしたやや抽象度の高い内容だったため、文法事項や注釈などに十分注意を払いながら慎重に読み進めていく必要があります。設問は例年と同じく記号選択を中心とする構成ですが、2022年は問3で記述が1問出されました。制限字数は15字以内と短いものの、文中表現を適切に換言しなければならず、点差がついたものと考えられます。

理科

①化学電池(化学)
新学習指導要領のダニエル電池を含む、化学電池についての基本的な知識問題でした。難度は高くないので、ミスなく解ききりたい内容です。
②電流、磁界(物理)
前半は回路の計算問題、後半は電流と磁界に関する問題でした。やや見慣れない形式で回路図が表されていて、丁寧に分析する力が問われています。
③植物(生物)
(諸事情により省略いたします。)
④天気、天体(地学)
天気と天体についての知識問題でした。やや細かい知識も含まれていて、教科書をよく読んでいる受験生には有利だったと考えられます。
⑤運動とエネルギー(物理)
記録タイマーを使った実験に関する問題でした。(5)は応用レベルの問題で、深い理解が必要です。(5)以外は基礎知識の確認問題なので、ミスは最小限に抑えたいところです。
⑥気体、物質の特徴(化学)
前半は気体の性質についての基礎知識の問題でした。後半は物質を判別する問題ですが、条件がやや複雑であるため、知識をもとに分析する力が求められています。
⑦岩石、火山(地学)
火成岩と火山について出題されました。多くの受験生にとって聞き慣れない語句が出されていますが、観点は頻出のものが中心です。問題文を注意深く読み、知識と組み合わせて解く必要がありました。
⑧動物、人体(生物)
動物の体のつくりに関する問題でした。やや発展的な知識も出題されましたが、文章と図をもとに推測できます。見慣れない図をもとに考える問題は、学芸大附高の入試問題では頻出です。

社会

①世界地理
正距方位図法や歴史上の旅行家についての記述を題材とした出題でした。地図、統計や文をもとに、世界各地の人々の生活に関して問われる傾向は例年通りでした。
②日本地理
近畿地方を中心とした出題でした。統計やグラフに関連した問題が半分ほどで、出題者の意図を汲み取らなければ解答できないものもあり、十分な演習を積んできた受験生にとっては有利な大問でした。
③日本史
政治と女性の関わりを題材とした出題でした。時代ごとに出来事や文化に関して問われていて、各時代の流れやそれを背景とする文化について正確に把握している必要がありました。
④世界史
通貨や金融を題材とした出題でした。思い込みで解いてしまうと失点する危険があるものもあり、文章や史料のポイントを正確に読みとり、解答を導く必要がありました。
⑤経済
貿易や貯蓄・投資を題材とした出題でした。経済分野から幅広く知識が問われましたが、どれも基本的なものであったため、確実に得点したい大問でした。
⑥公民
感染症対策に関連する国民の権利や財政を題材とした出題でした。時事への関心を試されるものや、正確な知識が要求されるもの、近現代史の知識が必要となるものなど、さまざまな形式で出題されていて、ほかの大問と比べて難度が高めでした。
