【専門家に聞く】「DX」って、なに?
見出し画像

【専門家に聞く】「DX」って、なに?

高校受験 SAPIX中学部

一昨年ごろからインターネットや新聞、テレビなどで目にしたり、耳にしたりするようになった「DX」。「一体、なんのことだろう?」と思っている方も多いでしょう。このDXについて、DXのコンサルティングを提供しているドルビックスコンサルティング株式会社 取締役COOの武藤覚さんに解説していただきました。併せてコンサルタントという仕事に関しても伺いました。

※2022年1月13日に取材を行いました。
※この記事は2022年3月27日に刊行されたSAPIX中学部の受験情報誌『スクエア』212号に掲載された記事のnote版です。

ドルビックスコンサルティング株式会社 取締役COO 武藤 覚さん
1992年3月、開成高校卒業。同年4月、東京大学理科一類入学。1996年3月、同大学理学部物理学科卒業。2001年3月、同大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)号を取得。同年4月、三菱総合研究所入社。2006年6月、スタンフォード大学経営大学院MBAプログラム修了。MBA取得。三菱総合研究所を退職後、経営コンサルティング会社、ネット銀行立ち上げなどを経て、2021年1月から現職。

デジタル技術を活用し 新たな価値を創出する

――DXとは、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
武藤さん:DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略語$${^※}$$で、劇的に進化したデジタル関連のテクノロジーを活用し、企業のビジネスモデル(利益を生み出す仕組み)を革新して、新たな価値を創出しようというものです。コンピューターの処理能力の向上、データ蓄積量の増加、インターネットの通信帯域の拡大(一度により多くの情報を送れるようになった)、モバイル通信・デバイスの普及など、デジタル技術が現在のようなレベルにまで引き上げられたことが大きく影響しています。ITやICTという言葉もありますが、IT・ICTやデジタルは技術そのものを意味するのに対し、DXはそれらの技術を活用して社会を改善、革新することといえます。

――企業が新たな価値を創出しようとするとき、なぜDXが必要になるのでしょうか。
武藤さん:それは個人と企業という二つの側面から読み解くことができます。まず個人。人はより自分の好みに合った物やサービスを求めるようになりました。かつては10人中10人とも同じものを持っているという時代もありましたが、現在は10人とも違うことが珍しくありません。ネットショッピングを利用すれば、自分の好みに合うものを探しやすく、買いやすくなったからです。また、何か調べ物があるときは図書館に出向いたり、重い百科事典を開いたりしていましたが、今ならスマホで簡単に知ることができます。
一方、企業は一層グローバルに展開するようになり、Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Appleという「GAFA」と呼ばれるプラットフォーマー(ネット上で世界を対象にサービスを提供している企業)が圧倒的な勝ち組とされています。いずれもデジタル技術を最大限に活用し、新たな価値を創出した企業です。また、少子高齢化などを背景に、人間が担っていた作業をロボットやAIなどが代替するようにもなりました。
このように、過去になかった物やサービスという、全く新たな価値を提供するにはDXが必要不可欠で、DX化に成功した企業こそが、個人や社会のニーズに応えられるような時代になっているのです。

※接頭辞trans-には「交差する」という意味があることから、Transformationは慣習として「X」と略されることが多い。そのため、略語はDXとされた。

DXの先駆者「GAFA」 多彩な技術が支えるDX

――私たちはほぼ意識することなく、既にDXの恩恵に浴してきたといえそうですね。
武藤さん:その通りです。例えば、前述した「GAFA」なしの生活はもはや考えられないのではないでしょうか。この4社以外にも、物やサービスをネットを介してマッチングし、共有する「シェアリングエコノミー」を担うウーバーも有名です。日本ではフードデリバリーの「ウーバーイーツ」で知られていますが、創業時は個人が空いた時間を利用して自家用車で客を有償で運ぶライドシェアのサービスを提供する企業でした。このサービスもデジタル技術がなければ誕生しなかったでしょう。

――DXを支えているのはどのような技術ですか。
武藤さん:いろいろありますが、ここでは六つほど挙げておきましょう。皆さんもよく知っているところでは、人工知能の「AI」、スマホなどの「5G」(第5世代移動通信システム)、ゲームやコンサートなどにも使われる「VR/AR(仮想現実/拡張現実)」があります。また、「モノのインターネット」と訳される「IoT」では、脈拍などが測れるリストバンドが身近な例になるでしょう。五つ目は、自分のPCにアプリが入っていなくても、ネットを介して必要なサービスを受けられる「クラウド」。そして、不正アクセスや情報流出などを防止する「セキュリティー」はDXが進展すればするほど、その重要性を増していくはずです。

DXの立役者となる技術

「企業の課題を解決すること」 それがコンサルタントの仕事

――では、武藤さんの仕事であるコンサルタントについて伺います。どのようなことを行っているのでしょうか。
武藤さん:簡単にいえば、コンサルタントに求められるのは「企業の課題を解決すること」です。その一般的な流れは「課題を特定」して、「解決策を立案」し、解決というゴールに向かって「実行・推進」することです。ただ、各企業が抱える課題は千差万別。依頼される案件に同じ課題は一つとしてないといっても良いでしょう。
そんな一連の仕事の流れのなかで最も重要になるのが、課題をきちんと特定すること。ここを正しく見極めないと、解決策が正確さを欠く上、ゴールの設定も間違えてしまいかねないからです。例えば、新しい事業を立ち上げたいという依頼が入ったとしましょう。その場合、「どんな市場が魅力的か」「競合相手は何をしているか」「自社の強みは何か」といった視点から分析し、何をすべきか特定していきます。

――DXのコンサルティングの実例をお聞かせください。
武藤さん:出版・書店業界では、書店が出版社から仕入れた書籍を返品する「返本」という独自の制度や、書店の経営圧迫要因となる万引きが課題となっていました。そこで、書籍を書店に納める入庫から書店内の棚の管理、追加発注、返本まで、1冊ごとにRFIDタグを付けて管理しようという解決策を提案しました。RFIDタグとはICを使ったタグと、電波を送受信する読み取り機から成るもので、タグを書籍に貼り付けることで簡単・手軽に書籍の在庫・販売を管理できるようになります。このシステムはDXがここまで発展しなければ実現しなかったはずです。

若いうちから大きな仕事を 勉強は「1番」を目指して

――とことん考えて顧客からの要求に期待以上の成果で応える。コンサルタントの仕事は相当大変そうですが、やりがいも大きいのではないでしょうか。
武藤さん:はい。一般的に、コンサルティング会社はハードワークで知られています。成果は質・量ともに求められ、クライアント(顧客)もメンバーものんびりとは待ってくれません。
一方で、若いうちから大きな仕事を任せてもらえる、常に最新の知識が得られる、自分の仕事が評価される、成果に見合った報酬がもらえる、転職によるステップアップが期待できる、といった特長があります。

――コンサルタントにはどんな能力が求められますか。
武藤さん:ある程度訓練によって身に付けられる「ハードスキル」と、個人の特性に関連する「ソフトスキル」に分けて示しましょう。前者は論理的思考力、分析力、知識など、後者はコミュニケーション力、精神力、チームワークで物事に取り組める力などです。
コンサルタントという職業は、小学校から高校にかけて頭を鍛え抜くという貴重な経験をするSAPIX生にとても向いていると思います。また、私自身も高校受験を経て開成高校に進学していますが、受験生の時の「自分を徹底して追い込んで勉強する」という経験によって、精神力が鍛えられたと感じています。

コンサルタントに求められる基本能力

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
武藤さん:新しいことを構想し、実現する。これがコンサルタントとしての最大の喜びです。なかでも、デジタル技術を活用して社会を変えていくDXコンサルタントを目指すなら、SAPIXで学んでいることが将来必ず役に立ちます。とにかく勉強にはしっかり取り組んでください。その際に大切なのが、「1番」を目指してベストを尽くすこと。最初から2番を目指していては、決して1番にはなれないからです。
YouTubeやSNSに代表されるように、現在は個人が「メディア」を持てる時代になりました。従来なら個人が手にできなかったものが、手に届くようになったのもDXの良さです。DXで世界をさらに良いものにすることに挑戦してみてください。

◇受験情報誌『スクエア』無料進呈中
資料請求された方に、受験情報誌『スクエア』最新号を無料進呈中。SAPIX中学部講師による学習アドバイスや、最新の高校入試情報、SAPIX中学部卒業生へのインタビューなど、受験勉強のヒントになる記事が満載です。SAPIX中学部ホームページよりお気軽にご請求ください。

この記事が参加している募集

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
高校受験 SAPIX中学部
難関国・私・公立高校を目指す小学5年生~中学3年生を対象とした進学指導塾、SAPIX中学部です。受験生とその保護者の皆さまに、「学習や志望校探しのヒント」や「学習のモチベーションアップにつながる読み物」などをお届けします。受験に向けた情報収集ツールの一つとしてご活用ください。