
東京都立高等学校(共通問題) 2022年出題傾向リサーチ
英語

①リスニング問題:小問数5
例年通り、問題Aと問題Bの2つに分かれていました。問題Aは設問ごとに対話とそれに関する質問を聞き、適切なものを選択肢から答える形でした。問題Bはカナダの中学生によるスピーチで、その内容に関する選択問題と英文記述問題でした。
②図表の読み取り(約650語):小問数4
1と2は、留学生と日本人の高校生による対話文の内容について、本文中の空所に補う語句の組み合わせとして適切なものを選ぶ問題でした。対話文には図表が含まれていて、必要な情報を素早く把握する力が求められています。3はその留学生が送ったEメールについて内容と一致する英文を選ぶ問題と、Eメールへの返信の一部を、3つの英文で書く問題でした。2021年よりも本文の語数が200語ほど増えています。
③対話文の読解(約650語):小問数7
3人の高校生とアメリカ出身の留学生による、目標の達成の仕方についての対話文でした。例年通り、問1~問5は本文中にある下線部の内容に関する選択問題でした。問6は、4つの英文を本文の流れに沿って正しく並べかえたものを選ぶ問題、問7は日記の一部に入る適切な語の組み合わせを選ぶものでした。自分で解答の方向性を決めてから選択肢の中でそれに近いものを探すという方法が有効です。
④物語文の読解(約660語):小問数7
美化委員会の委員長になった高校2年生の主人公の苦悩と成長を描いた物語文でした。すべての設問が本文の内容理解に関するものでした。主人公の心情の変化を意識しながらスムーズに内容を把握できたかどうかで、得点差がついたと思われます。

数学

①小問集合
〔問1〕から〔問6〕までは計算問題、〔問7〕は資料の整理、〔問8〕は円と角度、〔問9〕は作図の計9問からなる小問集合でした。基本的な内容なので、全問正解を目指したい大問です。
②文章題
例年通り「先生と生徒が作った」という設定の、整数に関する問題でした。〔問1〕はルールの確認、〔問2〕の証明問題も一度は演習したことがあると思われる内容なので、時間をかけることなく処理したいところです。
③二次関数
〔問1〕は変域、〔問2〕は直線の式を求める基本問題でした。〔問3〕は立式の仕方に迷ったり、計算に手間取ったりした受検生も少なくなかったと思われます。
④平面図形
正三角形を2つつなげてできるひし形を基調とした問題でした。〔問1〕は角度に関するもの、〔問2〕①は証明問題、②は面積比に関するものでした。②については方針に悩んだ受検生もいたことでしょう。
⑤空間図形
直方体の辺上の動点に関する問題でした。ただし、〔問1〕〔問2〕ともに考えるべき秒数が指定されていたので、点の動きの把握には苦労しなかったと思われます。〔問2〕では求めづらい立体の体積が問われていたので、少し工夫をする必要がありました。

国語

①漢字の読み取り
例年通りの5問構成です。受検生にとってなじみのある表現が問われました。
②漢字の書き取り
こちらも例年通りの5問構成です。問われている語句はいずれも標準レベルでした。
③村山由佳『雪のなまえ』
主人公と曾祖父母とのやりとりを描いた小説文です。例年付されていたリード文が2022年はなかったため、慎重に場面を把握しながら読み進める必要があります。設問はいずれも記号選択です。登場人物の心情や表現の効果が問われていますが、話の展開と登場人物の心情を丁寧に読み取ったうえで選択肢を吟味する必要がありました。
④大須賀節雄『思考を科学する』
人間の「考える」という行為について考察した論説文です。抽象的な表現が多く、読みづらく感じた受検生も多かったと思われます。設問は記号選択4問と200字の条件作文1問からなる構成です。記号選択では、段落ごとの要旨や段落同士の関係を丁寧に確認することが求められました。条件作文は例年同様、文章内容をふまえつつ、適切な具体例を挙げながら自分の意見をまとめるというものでした。
⑤『山家集』/白洲正子・目崎徳衛の対談/白洲正子の文章
大問5では古典作品についての対談と古典作品の原文の出題が続いてきましたが、2022年はそこに古典を解説した文章も加えての出題となりました。設問の内容自体に大きな変化はなく、古文に現代語訳が付されている点も例年と変わりませんが、文章が1つ増えた分だけ読む量が増加しています。精読と速読のメリハリをつけて、できる限り手早く要点を掴むことが求められました。

理科

①小問集合(物理・化学・生物・地学)
例年通り、物理、化学、生物、地学の4分野から、基本的な知識や理解度を測る問題でした。設問数は、2020年の5問に戻りました。問3を除き典型的な内容なので、取りこぼしは少なくしたい大問です。
②小問集合(物理・化学・生物・地学)
物理、化学、生物、地学の4分野について、レポートの文章を読んだうえで答える問題で、例年通りの傾向でした。一方、計算問題が出されなかった点が例年と異なり、解きやすくなっていました。
③地質(地学)
岩石や地質時代に関する知識を確認する問題と、地層について考察する問題でした。問2でやや細かな知識が取り上げられたほかは、典型的な内容が扱われていました。
④植物、遺伝(生物)
植物の分類や生殖に関する知識問題と、遺伝に関して実験結果から考察する問題でした。条件を見誤りやすく、注意深く解くことが求められました。例年通り、仮説と検証をテーマとした設問が見られました。
⑤イオン(化学)
問1、2は、2021年度から全面実施の新学習指導要領で追加された内容からの出題でした。過去の入試での出題例が少なく演習量が不足しやすいため、学習の精度が試されました。問3、4は、中和に関する典型的な問題でした。近年、計算問題が継続して出されていましたが、2022年は見られませんでした。
⑥運動とエネルギー(物理)
レール上の物体の運動についての問題でした。問われている内容はいずれも典型的なもので、取りこぼしを最小限に抑えたい大問です。

社会

①小問集合
地理分野からは地形図と写真を用いた問題、歴史分野からは文化財の所在地を選ぶ問題、公民分野からは文章から用語を判定する問題が出され、例年通りの小問構成でした。地形図の問題は、資料を丁寧に読み、地形図と見比べることが要求されました。
②世界地理
世界地図をもとに、気候や各国・地域の特色を問うものでした。貿易に関する問題は、文章から国を特定したうえで、ほかの選択肢と慎重に比較しながら統計表を選ばなくてはならない、難度の高いものでした。
③日本地理
日本地図に示された都道府県や工業地域を特定するものや、新旧地形図の比較が出題されました。形式は例年通りであったものの、与えられた文章や統計から解答のポイントとなる部分を探し出したり、やや複雑な計算処理を必要としたりするものがあったため、例年よりも難しくなったと言えます。
④歴史
古代から近現代の出来事に関して出題されました。4つの小問すべてが時期の特定に関するもので、選択肢や文章の中からキーワードを探す必要がありました。
⑤公民
政治分野からは基本的人権や国会、経済分野からは経済史や現代社会の特徴に関するものが出題されました。国会に関する問題では、立法の過程をしっかりと理解している必要がありました。
⑥総合
世界各国の地理や歴史に関する総合問題でした。資料から首都の位置を特定する問題は、文章をヒントに国を特定したうえで、地図に表示された目盛りを活用できたかどうかが鍵で、東京都立校の入試では過去に出題例がないものでした。
