高校受験 SAPIX中学部
[受験歳時記] 第60回「漫画家」
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[受験歳時記] 第60回「漫画家」

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漢和辞典

教材販売業に携わる若者の投書。仕事の合間に販売のサンプル品から漢和辞典を取り出して開いていたら、あるひとつの漢字の成り立ちに目が止まった。羽の生え始めたひな鳥が日に向かって飛ぶ練習を繰り返すことから「習」という漢字ができたとある。まだまだ新人の自分をひな鳥に重ね合わせていたのかもしれないが、以後、調べ物としてではなく、読み物として漢和辞典にはまっているという。

制作現場

受験情報誌『スクエア』の記事「SAPIX CAREER」では、各界で活躍する卒業生を紹介している。本気で勉強した経験をどう活かしているか、その姿を「先輩たちの今」に探るシリーズだ。210号では連載中の作品をすでに何本か手掛けている若手漫画家が登場し、企画の立ち上げから作品の掲載まで、普段は知りえない興味深い話を展開している。漫画家を目指したきっかけは高2の文化祭、自作の絵はがきを来場者が喜んで買ってくれたことだという。自分が創意工夫し手掛けた作品が、見ず知らずの他人を喜ばせたという実感が大きかったのだろう。人を喜ばせることがそのまま自分への拍手、自分の喜びとなって返ってきた、その確かな手応えが、以後、長く創作意欲の源は読者の笑顔だとする本人の出発点をなしたようだ。

我流で仕上げた作品を出版社に持ち込む方式からコンテストへの応募方式に転換するや、いきなりの銅賞受賞。それをきっかけにデビューを遂げ仕事を進めながらも、編集者からのアドバイスを漏らさず記録した詳細なメモを頼りに猛勉強したという。作品テーマや方向性、キャラクター設定などをめぐり編集者との間で繰り広げるディスカッションは、自己の殻を破るアイデア合戦であり、意見の表明力を鍛え、画力を磨き上げるにも欠かせない熱い時間であるらしい。議論を交わすうちに自ずと発想に弾みがつき、思考が深まり、論点がはっきりと見えてくる。相手の話に思わずうなずいている自分がいるし、自分の話を脳内に染み込ませるように聞き入ってくれている相手がいる。編集者とはクリエイター以外のもう一人の共著者であると思わせるほどの白熱した様子が語られている。

そして、二人の間に立ちのぼるそうした創造的な時間は、かつて中学時代に体験した授業でもしばしば味わっていたとして、高校受験当時の塾での時間を例に挙げている。意義深く、思い出深かったであろうその時間を想像するに、自分の考えと相手の考えが切り結ばれ、足し算となり、さらに掛け算へと高まっていく、そんな経験だったのだろう。そしてそこから得たものとは、双方で知力を注いだ末の最も優れた解答、充足感に満ちた共同作品のようなものだったのではないだろうか。

楽しさを見つけ出す

ストーリーを考え、ネームと呼ばれる下書き制作以降、完成まではほぼ漫画家ひとりの仕事になる。貪るように、憑かれたように集中が続く1~2週間。かつて「無になる時、無二が生まれる」というキャッチコピーがあったが、一事に没入し続けることで、やがて頭上から二つとないアイデアが舞い降りてくることだろう。

前述の漢和辞典にはまっているという若者の投書、その末尾は、こう締めくくられている。「皆が見過ごしてしまいそうなことから楽しさを見つけ出す力はとても大事なのではないか」と。読者を笑いに包む漫画制作に携わることも、同様に、笑顔の花を咲かせようと日々の中から楽しさを見つけ出す力を持つプロなればこその業なのだろう。

増田 恵幸
著者紹介:SAPIX中学部にて高校受験指導、受験情報誌『SQUARE(スクエア)』編集に携わる。2019年定年退職。在籍時より『受験歳時記』を執筆。


◆『受験歳時記』第1~55回のバックナンバーは、SAPIX中学部ホームページで読むことができます。第56回以降は、マガジン「コラム[受験歳時記]」からご覧ください。

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