コラム[受験歳時記]

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[受験歳時記] 第58回「聞き違い」

マスク生活夕暮れ迫るレストラン。窓際の席の厚手のカーテンを少し開けながら坊やはつぶやくように言った。「お外は暗いよ」。すると隣の若い母親がいきなりふきだした。もちろん母親は聞き違えたのである。こんな小さな子が、窓の外を見ながらはかなげに「男はつらいよ」などと溜め息まじりに言うものだから。しかしマスクをしたままでは無理もない。五十音図の中に秩序立って収められていたはずの日本の「言葉」が、マスクの網目を通すと子音と母音とに解体されでもしてしまうのか、「音」としてしか聞こえてこない

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