コラム[受験歳時記]

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[受験歳時記] 第57回「9×9」

[受験歳時記] 第57回「9×9」

美しい習慣電車が止まると、5、6人の野球部員が乗り込んできて、横並びにどっかり腰を下ろし、車内は満席になった。大きなスポーツバッグを床に置き、マスク越しでにぎやかに話している。次の駅で杖をついた老人が2人乗ってきた。と、床のスポーツバッグが一斉に宙に浮いたかと思うが早いか、占められていた座席ががらんと空席に。野球部員たちは、何事もなかったかのようにドア付近に立ち、楽しそうに会話を続けている。 佐多稲子の小説に「水」という短編がある。駅のホームで少女が泣いている。奉公先で母急

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